2005年9月より2007年8月まで、仙台市のフリーマガジン『いずみっぷる』に掲載

ドラマな日々 第19回

『ついに、韓流にはまった!?~バラードの帝王シン・スンフン~』  





 シン・スンフンという韓国の歌手をご存知だろうか。俳優のソン・スンホンではない(なんてソックリな名前なんだ!)シン・スンフンである。彼の存在を知ったのは、2006年の夏。河口湖の屋外劇場「ステラシアター」での森山良子さんのコンサートの時のこと。その日、森山さんの生の「涙そうそう」を聴きたくて、連ドラ執筆の合間を縫って、車を飛ばし会場にかけつけた。席に座ってから、なんだかいつもの森山さんのコンサートと、雰囲気が違うことに気づいた。ペンライトを持った年配の女性の方がチラホラ。おそろいのTシャツなんかも着て、なにやら日本語ではない〝うちわ〟なんかも手にしていらっしゃる。一体なんなんだろう―――と不思議に思っていたのだが、途中で、ゲストの韓国人男性歌手が現れ納得した。彼がステージに登場した途端、黄色い声援が飛び、歌が始まると夜空にペンライトが揺れた。そして、皆一様に韓国語で歌詞を口ずさむ。その人こそ、韓国で"バラードの帝王"と呼ばれているシン・スンフンだった。彼の歌は、素晴らしかった。プロの歌手に歌がいうまいという表現をするのは、失礼なことかもしれないが、"こんなに歌がうまい人が世の中にいたのか!"と、驚くほど素敵な歌声だった。楽曲の中には私が知っている曲もあり、映画「猟奇的な彼女」の主題歌「I Believe」 や、やはり映画「連理の枝」の主題歌も彼が歌っていると、その時始めて知った。森山さんとのデュエットも最高に美しく河口湖の夜空の星とともに、深く心に刻まれたのだった。東京に帰って早速CDを購入。ホームページなども覗いてみたが、その後の日本でのコンサートの予定はまだなかった。ところが今年に入って、シン・スンフン来日。それも国際フォーラムでのコンサートの情報を得、これは行くしかないとチケットを入手した。とはいえ、私はスンフニーファミリー(と、ファンのことを言うらしい)としては超新参者。どんなコンサートなのか、ドキドキしながら会場へ向かったのだった。当日、チケットを取ってもらった友達とは席が離れてしまい、ひとりで席に着く。5000人の大ホールは超満員。しかも99%は女性。その熱気でムンムンである。幕が上がり、ステージが始まると、皆一斉に立ち上がり拍手! そして曲が始まる―――。その時、ふと気づいた。スンフニーファミリーが皆持っているものを、私がもっていないことに。それは、ペンライトだった。彼が歌い始めると、一斉にペンライトを振る。どうやら決まりごとがあるらしく、座って静かに聴く曲、立ってペンライトを振りながら聴く曲、一緒に踊りながら(!)聴く曲。それはそれはもう楽しんでいる。70歳を(たぶん)越えた女性も、曲に合わせ軽やか踊っている。河口湖の時も驚いたが、ソロのステージはその比ではない。ディープである。つまりものすご~く"濃い"のである。その濃さに圧倒され、ポカンと立っていたら、隣のOL風の女性が、私の肩をポンポンと叩いた。何かなと思ったら「もしも、ご迷惑でなかったら」と、持っていたペンライトを貸してくれようとしているではないか。「でも、あなた様のペンライトは?」 と、言おうとして彼女の手元を見ると、なんとその手には3本のペンライトが握られていた。なぜ3本も?!私のようにペンライトを持っていない人がいたら貸してあげようと思って用意していたのか、それとも消えてしまった場合の予備なのか。謎である。しかし、たぶん韓流の輪はこうやって広がっていくのだろう。きっとこれがきっかけでお話をしたりして、お友達になるのだろうなあと思いながら、小心者の私は、会話もできず、ただただペンライトを振った。後方の席にいた友人は、急にペンライトを振る私の姿を見て、いつ買ってたんだ! と、驚いたらしい。スンフニーのコンサートはたっぷり3時間。思いっきり楽しませてくれる。あなたもよろしかったら、ディープな世界にハマってみませんか?その後も私の仕事部屋には、スンフニーの曲が流れている。

*2007年3月号掲載*




























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