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2005年9月より2007年8月まで、仙台市のフリーマガジン『いずみっぷる』に掲載

ドラマな日々 第8

 『涙そうそう』



 3年越しに手がけていた映画の脚本、「涙そうそう」が、先日ようやく完成しました。これは、TBS50周年記念「涙そうそうプロジェクト」のひとつ。森山良子さん作詞BEGIN作曲の「涙そうそう」をモチーフに作った血のつながらない兄と妹の物語です。舞台は沖縄。妻夫木聡くん、長澤まさみさん主演、TBSディレクターの土井裕康さん監督で、今秋公開の予定です。映画の脚本を書いたのは、初めてのことだったのですが、途中諸々の事情で撮影が延期になったり、そのために書き直しをしたり。産みの苦しみを存分に味わった仕事でした。でも、苦労したものほど結果は良くなると信じて、来月からの撮影にエールを送っております。書いちゃったらもう、あとはスタッフ・役者さんにバトンを渡すしかないというのが、脚本家の仕事。ドキドキしながら、あとは出来上がりを待つしかないのです。「涙そうそう」は、思わぬ偶然が重なった仕事でした。3年前。2003年の春、連続ドラマ「Dr.コトー診療所」の執筆のために、私は、沖縄県八重山諸島にある日本最西端の島、与那国島に滞在していました。そこへ偶然、森山良子さんがコンサートに来られたのです。森山さんは、私が卒業した富良野塾の芝居に曲を書いてくださっていた関係で、「コトー」に出演していた富良野塾の後輩たちとも交流があり「こんな処で、あなたたちに会うなんて~!」と、思わぬ南の島での再会をとても喜んでくれました。富良野塾役者陣=通称チームFJ&私は、撮影の合間を縫いコンサート会場の島の中学に出かけて行きました。中学の体育館には、生徒たちの手作りの舞台が作られており、手書きの絵や花をバックに、森山さんは、本当にギター一本で、あの美しい歌声を披露してくれました。その中にあったのが「涙そうそう」。「涙そうそう」とは、沖縄の方言で涙がポロポロあふれて止まらないという意味。そして、その時初めて「涙そうそう」が、森山さんがまだ20代の時に亡くなったお兄さんのことを思い、書いた詞だということを知りました。それまで「涙そうそう」をラブソングだとばかり思っていた私は、その話に小さな衝撃を受けました。亡くした人のことを思い聴いてみると、その詞の意味が、歌が一層と深くやさしく心に響き、私は2年前に亡くなった母のことを思い出し、気がつくと涙を流していました。そうして、南の果ての小さな島の体育館で、島の子供たちと一緒に聞いた「涙そうそう」は、忘れられないものとなったのです。そんな出来事があり、東京へ戻ったある日。TBSの八木康夫プロデューサーから、実は「涙そうそう」をドラマと映画にしたいんだけど、吉田さんどう? と言われ、私は思わず"コレは運命です! 書かせて!"と叫んでいました。そして、与那国島での出来事を、蕩々と話したのでした。八木プロデューサーは、内心呆れていたかも知れませんが、ニコニコと聞いてくださり、"それなら、がんばって作りましょう"と言ってくれたのです。それが、この映画の始まりです。よろしかったら、この秋ぜひご覧になってください。 

*2006年4月号掲載*















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