2005年9月より2007年8月まで、仙台市のフリーマガジン『いずみっぷる』に掲載

ドラマな日々 第7回

会議は続くよ、どこまでも




 私は今、秋から始まる連ドラの執筆中。予定というのは、なぜかことごとく遅れるもので、当初の予定より2ヵ月ほど遅れ(これは、かなり焦らなければならない状態なのですが!)ようやく第1話の形が見えてきたところ。
 なのに見てしまった先月のトリノ。これが又ちょうどいい時間にやっていた。私は夜型で、夜中から明け方にかけて執筆するので、執筆を終え寝ようかな~と思って、ちょっとテレビを付けると、氷上を荒川静香さんが、舞っていたりする。そして、その神々しいまでの表現に、心打たれてしまったりする。で、ついついアスリートたちの競演に見入ってしまい、翌日の打ち合せに、ヘロヘロ状態で出かけ、〝昨日、見た見た?見ちゃってもう寝不足で〟なんて、始めると、そこはさすがマスコミのテレビ局社員。詳しい詳しい。”荒川静香のコーチは、誉め上手で「君のスピンは、世界一美しい!」とか言うらしい”とか。 ”イナバウワーっていうのは、それを開発した選手の名前で、点数には関係ない”とか。”だけど、その誉め上手のカッコイイ外人コーチが、「君のその美しい技を、世界中の人に見せてあげたい」と、言ってイナバウワーを取り入れたらしい”などと、教えてくれ、ひとしきり盛り上がったのだった。脚本家とプロデューサーというのは、言ってみれば、スポーツ選手とコーチみたいなもの。1シリーズの連ドラ(1時間×10本~12本)を仕上げるのに、半年から、長い時で1年もの間、二人三脚で脚本作りをして行く。スポーツ選手たちが、名コーチにつくかどうかで、モチベーションが上がりいい記録が出せるように、脚本家もプロデューサー次第で、その作品の出来が変わってくるというもの。実際、連ドラの最後の方になってくると、こちらの気力体力も限界に達し、電話の向こうでプロデューサー氏に「もうボクは、これ以上何もいうことはありません。がんばれ~。もうチョイだ~。がんばれ~」と、声援されたこともあったっけ。ね。マラソン選手のようでしょう?で、私も荒川静香のコーチみたいな人がほしいなあと思い、散々トリノで盛り上がった後、新チームのプロデューサーに言ってみた。”ホラ。荒川静香だって誉められて、金を取ったんだからさ。ホラ……。目の前の脚本家に。君の書く台詞は世界一美しいとかサ……。ホラ!” プロデューサー氏二人は、一瞬ポカンと私の顔を見てから、目線をスッとそらし、”さ。こんな話をしていても、時間ばっかりたっちゃいますから、そろそろ始めましょう。台本のxページですが!”と、軽く無視され、打ち合せは始まったのだった。 その後、真面目に会議は進んだ。その途中で一人がポツリと言った。”数字(視聴率)には関係なくても、皆が感動できる美しいシーンを入れましょう。そういうドラマにしましょう” ”イナバウワーですか?” 秋からのドラマ、これはいけるかもしれない。

*2006年3月号掲載*

















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