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2005年9月より2007年8月まで、仙台市のフリーマガジン『いずみっぷる』に掲載

ドラマな日々 第5回

吉田家・嫁姑問題勃発!?  



 去年の秋から、冬にかけて書いたドラマ「恋の時間」は、黒木瞳さん扮する独身キャリアの姉と、大塚寧々さん演じる主婦の妹が、それぞれ恋に落ちてしまうという話でした。主婦の妹は、毎朝犬の散歩をする朝の公園で、偶然出会った音楽家と恋をしてしまいます。人を好きになるのに理由はないと思うのですが、それでも夫も子もある主婦が恋をするには、潜在的な日常生活への不満とか、閉塞感があってしかるべしと思い、ここはひとつ”悪気はないが迷惑な姑”という存在を置こうと考えたわけです。姑役を演じてくださった大森暁美さんは、どこにでもいそうなお義母さんを、何ともリアルに演じてくださいました。大森さんを見るたび、画面の前で「このイヤみっぽさがたまらん!」と、一人つぶやいてしまうほど。ドラマとしては、本当にありがたいことだったのですが。私にとっては、この姑への嫁の台詞が重大な問題を引き起こすことに……。
 第2話で、大森さんのお姑さんが、届けてくれたおかず。私は、台本には確かに『魚の煮付け』と書いたのですが、オンエアの時に、それがなぜか『小アジのマリネ』に変わっていたのです。「“小アジのマリネ“お義母さんが持ってきてくれたのよ。家の前に立って待ってるんだもん、ビックリしちゃった」と、寧々さんの夫への台詞。要は、迷惑ということです。この程度の台詞の変更は、大筋には影響ないし、本来文句を言うようなことではないのですが、この時だけは、私は叫びたかった。「やめてくれ~! なぜ変えたのっ!」と。『小アジのマリネ』は、こともあろうに、私の旦那さんのお母さんの得意料理。しかも私の大好物なので、ことあるごとに作って持ってきてくれる一品だったのです。これには正直焦りました。このドラマは姑も見ているはず、しかも、嫁はホテルにカンヅメになり、息子である私の夫は、一月以上もほったらかし。そこに『小アジのマリネ』です。私は、オンエア後すぐにプロデューサー氏に電話をかけ、感想もそこそこに「どうして? なんであそこの台詞が”小アジのマリネ”に変わってるんですか?」と、問い詰めると、プロデューサー氏は、意味がわからずキョトンとして、「ああ。アレねえ。確かリハーサルの時、監督が、お姑さんが持ってくるなら冷えてもおいしいものの方がいいからって、煮付けから”小アジのマリネ”に変更したんですよ。何か問題ありました?」「大ありです……。」と、心の中でつぶやき電話を切った私。世におかずなど数多くあるのはずなのに、このピンポイントな一致をどう解釈していいのか? しばし呆然と、テレビを消し、カンヅメ中のホテルのベッドにひとり正座してしまったのでした。
 その後、義理の母からは『小アジのマリネ』については、何のコメントもなし。気付いているのか、いないのか聞くのも恐い……。が。オンエアもが終わり、夫の家に顔を出した時。食卓の上には、キチンと鎮座していました……『小アジのマリネ』。
 お義母さん! 私、書いてませんから! 決して! ホントですから!


                                *2006年1月号掲載*








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