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2005年9月より2007年8月まで、仙台市のフリーマガジン『いずみっぷる』に掲載

ドラマな日々 第22回

星一徹と化した男たち  




先月の父の日、甥(10歳)の少年野球の試合を観に行って来た。いや正確に言うと、観に行くのを許された。甥は、子供の頃から運動が不得意。小学校に上がる前、どうしてもスキップがうまくできなくて、「イッチニ! イッチニ! こうでしょ!」と、ママの指導を受け、懸命に練習していたその小さな後ろ姿は、我が甥ながら健気であった。小学校に上がってからも、運動会ではビリから1、2位を争っていたらしい。その甥から先日電話があった「こんばんは! あのね! 運動会の徒競走で一位になったよ。それじゃお母さんに代わります」どうやら、一位になったのがうれしくて、報告がしたかったらしいのだが、こちらが何か言おうとすると、いつもすぐに"お母さんに代わられ"てしまう。変なヤツである。甥の足が速くなったのは、野球練習の成果らしい。ある日突然、自分から「野球チームに入りたい」と言い出し、地域の少年野球チームに入って2年。いったいどんな練習をしているのか、私としては見たくて仕方なかったのだが、「お見せするようなものじゃありません。万年ベンチ入りです。レギュラーになって、試合に出られるようになったら見に来てください」と、ママから止めれていた。その甥が4年生になり、レギュラー入り、なんと、5番を打っているという。それは観に行かなきゃ! ということで、眠い目をこすりながら早起きし行って来ました、都内某所の野球場へ。グラウンドでは、すでに子供たちの練習が始まっていた。その日の試合は、大事な公式戦。しかも相手は昨年の優勝チームとあって、子供たちの間にも緊張感が漂っている。笑ってしまったのは、相手チームが、絵に描いたような"強豪"だったこと。子供たちが皆、体格がいいのである――いや、奥歯に物が挟まったような言い方はやめよう。デブなのである! しかもそこはかとなく、悪役感が漂う強面集団。とその時、いきなり相手監督の怒声が!「てめえコノヤロ! ボケッとつっ立ってねえで、早くポジションつけ!」巻き舌でまくしたてる。私は、いきなりビビる。怖すぎる。しかし、悪役フェイスの少年は「すみません!」と素直に謝りキビキビと練習を始める。本気である。ひやかしで見に来た自分が恥ずかしい。一方、甥のチームは、これまた笑ってしまうのだが、まさに映画「がんばれベアーズ!」のような寄せ集め集団。ちびっ子あり、女の子あり、メガネあり、気の強そうな子、弱そうな子、ボーっとしてる子。おいおい大丈夫か? こんなんじゃコールド負けじゃ? と思ったが、意外や「ベアーズ」はがんばった。1回、コントロールを崩した相手ピッチャーの隙を付いて5点先取! 相手監督はカッカし、交代させられたピッチャーはベソをかいている。「ベアーズ」ベンチには、ユニフォームを着た4人(!)の大人の姿、皆選手のパパたちだという。最初は冷静だったパパたちも、試合が進むにつれ本気モードに、好球を見逃し三振をくらった子供に、「見逃してんじゃねえ!」と、本気でキレていたのには驚いた。そのかいあってか、甥チームはその後もコツコツと点を入れ、ついに勝利! 喜ぶ子供たち、そして父兄。「お母さん、おめでとうございます!」とそばにいた私まで、握手を求められてしまった。さて、肝心の甥はと言うと、4打席1安打2四球1三振。ヒットもようやく当てたと言う感じだった。気がつくと甥のパパ=私の弟が、「なんで大きく振らなかったんだ」と、甥を問い詰めている。「だって監督の指示だったから……」と甥。それを聞いて「ううむ」と本気で悔しがっている弟。聞けば弟は、試合前日の練習終了後の夜、甥をバッティングセンターに連れて行き「明日のピッチャーの球は、コレよりは遅い」と言いながら、80球も打たせ特訓したという。こんな話どこかで聞いたことあるような―――。そう、まさに弟は「巨人の星」の星飛雄馬の父、星一徹と化していたのだった。

*2007年6月号掲載*


































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