2005年9月より2007年8月まで、仙台市のフリーマガジン『いずみっぷる』に掲載

ドラマな日々 第2回

カンヅメ!?



 ただ今私は、東京赤坂のホテルにカンヅメになり、「恋の時間」後半戦を執筆中です。
 通常より速いペースで進んでいたはずなのに、気付いてみると、結構切羽詰った状態に・・・。夏休みの宿題と同じで、どうしてこう物事は予定通りに進まないのでしょう。
 思い起こせば十数年前、初めて連ドラを書いた時に、西新宿のホテルにカンヅメになって以来、ドラマを書くたび、都内あちこち色んなホテルに入りました。
 大抵が切羽詰った苦しいカンヅメなのですが、一昨年「Dr・コトー診療所」を書いていた時の、沖縄県与那国島のカンヅメは、ちょっと違いました。ロケ隊が東京から全員島に行ってしまうので、それにくっついて、私も島で執筆することになったのです。
 与那国島は、日本最西端に位置する人口1800人ほどの小さな島。主な観光は、ダイビングと釣り。リゾートホテルなど皆無の民宿ばかりの島です。そこに、たまたま、仕事ができそうな部屋があるということで入ったのが、民宿にあった元スナックを改造したスウィートルーム。スウィートといえば聞こえはいいですが、要は、今は使っていない元スナック部分(カラオケセットや、マラカスまでおいてあった!)の隣に寝室がついているという間取り。その寝室になぜか勉強机がおいてあり、執筆には最適というわけで、スタッフが探してきてくれたのです。
 しかし、なぜそこに机が・・・。それは最後まで謎だったのですが、その木製の勉強机には、「正太」と彫刻刀で彫られた痕があり、きっとこの宿の息子さんの正太くんが、子供時代使っていた物なのだろうと「正太」に思いを馳せながら、毎日真面目に、仕事をしておりました。(ホントですよ!) 夜中にゴソゴソと音がするので見てみると、巨大なゴキブリがいたり! 台湾からの伝書鳩が部屋の中に入ってきたり、事件は沢山ありましたが、何がすばらしいって、それはやはり、窓外に見える碧い空と珊瑚礁の海。執筆に疲れて海岸に散歩に出ると、天候によって毎日色が変わる美しい海が、目の前に広がっているのです。なんという贅沢! そして、波の音や海の色に、人は本当に癒されるものなのだと実感したのもこの時でした。疲れた頭は、波の音でリフレッシュされ、白い砂浜を裸足で歩くだけで、肩凝りまでとれる気がしました。
 以来、私の夢はビーチハウスを持つこと! 海辺に執筆用の家を一軒持ち気が向いたらそこで仕事をするのです! でもな。海はやはり沖縄の抜けるような碧さでないと・・・。そう思うと、遠のく夢を見つつ、都会の真ん中の高層ビルを眺めながら、悪戦苦闘している今日この頃です。
 ちなみに、与那国島カンヅメは、約1カ月で終了しました。
 なぜかというと、島の人たちや宿のオーナー夫妻と仲良くなるにつれ、やれ飲み会だ、ダイビングだと遊びに誘われてばかり、これでは仕事にならないと、涙を飲んで島を発ったのでした。



                                                                                2005年10月号掲載*










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