月刊日本語(現 日本語教育ジャーナル)にて2007年4月号~2010年6月号まで連載

ことばのココロ 第7回

軽井沢生活その一 ライフルと日本刀




 この夏、数年来の念願かなって、軽井沢に仕事場用の家を借りた。現在その家で、一〇月から始まる連ドラの執筆中。朝は鳥の声で目が覚め、日中はサワサワと木々を揺らす風音が聞こえてくる。フフフのフである♪ 快適な空間で、さぞ仕事も進んでいるだろうと思われるかもしれないが、そればかりはほとんど東京と変わらないのはなぜだろう。大きな声では言えないが、むしろ遅れ気味である。本当に、オンエアに間に合うのだろうか。実はドキドキしているのだが。ま、それは置いといて――。

 毎年夏が来るたびに、猛暑の東京で、クーラーつけっぱなしの狭い部屋に閉じこもり、仕事をするのは、体にも心にも悪いと思っていた。どこか涼しい場所で、できれば高原の避暑地なんかで!、さらに欲を言えば、憧れの軽井沢なんかで!!、夏を過ごしたい、過ごしたい、過ごしたいと、念仏のごとく唱えていた。唱えているだけで家を借りられるわけもなく、生来のずぼらな性格もあいまって、毎年気がつくと秋になっていた。ところが、昨年末、友人が軽井沢に移住。その計画を聞いた時、彼女曰く、私の目がキラリ!と光ったらしい。彼女に頼んで、春ぐらいから、よさそうな物件を探してもらった。

 彼女のすごいところは、たった数カ月で、もう何十年も軽井沢に住んでいるがごとく、いろんな人とお友達になってしまうことだ。この家も、彼女の家の近くの喫茶店のママさんの紹介で貸してもらえることになった。ママさんとこの家のオーナーが、お知り合いだったのだ。この家を借りることにしたのは、家の造りや住環境はもちろんだが、何より、オーナーご夫妻が同じ敷地内に住んでいるというのが、決め手となった。
 仕事柄、一人で家にいることも多い。山中の一軒家では、さすがの私も、ちょっと怖い。軽井沢は治安もよく、防犯面は安心らしいが、サルやクマが出てきたら、困ってしまう! こちらに来てわかったのだが、実際、軽井沢はサルが多く、道端や庭先に我がモノ顔で座っていたりする。友人の旦那さん曰く、彼のオフィスの前をサルが、集団で手を上げて悠々と道を渡っていたとか!? 昨日もラジオから、〝今日のサル情報〟というのが、大真面目に流れていた。
 
 そんなサルやクマのことで、散々脅かされ、少々怖くなっていた時、この家のオーナーにお会いすることになった。オーナーは八〇歳過ぎの老紳士で、若々しい奥さまと二人、素晴らしいお宅に悠々自適で暮らしていらした。
 リビングに通され、まず目に付いたのは、大きな鹿の剥製! そう。彼はハンター! 狩猟が趣味だったのだ。私が、人はともかく、サルやクマが心配と、つい口にしたところ、「大丈夫! 一人で怖かったら、ボクのライフル、玄関に置いておけばいいじゃない。なんなら日本刀もあるよ!」と、嬉しそうにおっしゃった。この、冗談とも本気ともつかない言葉の主のお話は、また次回!






脚本家。代表作にTVドラマ『悪魔のKISS』『お見合い結婚』『恋を何年休んでますか』『Dr.コトー診療所』、映画『涙そうそう』など。目下、10月に始まる明石家さんま・長澤まさみ主演の連続ドラマ『ハタチの恋人』(TBS系・毎週日曜21時から)執筆中。

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